あいまみえ(武蔵美・野方・高円寺)

こんにちは。

 

昨日は武蔵美の芸祭に行くという予定を立てていた。特段理由があるわけでもなく、強いて言えば一人たまたま会えたらうれしいなという人がいるという不埒な理由だった。友人の妹も出展しているらしく、あいさつをするということも頭にあった。たまたまその友人も同日に別の友人と行くとのことで、一緒に行くというよりは「あいまみえましょう」といううっすらした予定を立てた。「見える」(みえる / まみえる)と「出る」(でる / いづる)は日本語のバグだよなあ。 ほかにもあったら教えてください。

 

休職をしてから変わったことの一つに、午前中に自然と起きるようになった、という点がある。毎日休みなので、そこまで疲れていないのだろうね。けれど別にそれは午前中から活動できるようになったということではなく、音楽や映像を流しながらふとんの中で目をつぶったり、スマホをいじったりする時間が増えたということである。

 

そんな感じでうつらうつらしていたら、電話が鳴った。12時半くらい。浅く眠っている時の電話の音はふだんより大きく聞こえるもので、リモートワーク中の居眠りを思い出し、心拍が上がる。出てみると友人の声がしたので、「あ、ごめん眠くてまだ寝てて…でも夕方までやってるよね?まだ行くつもりではあるよ」と答えて、再びうつらうつらに戻った。一人きり夢うつつの部屋。

 

適当に準備をし、珍しく全身黒い服を着て、サンリオ総柄のかばんを提げて、けろけろけろっぴのバッジを付けて、家を出る。

 

中央特快はいつも思っているより速く、すぐ国分寺につく。乗り換え時間は2分で、「乗り換えする駅で汚れた便器に腰かがめ」をする時間はなかった。スピッツ草野マサムネも武蔵野美術大学卒なのです。

鈴虫を飼う

鈴虫を飼う

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西武国分寺線に乗ることなど、ふだんはない。他の乗客もそうだったと思う。急ぎ足で乗り換えをして、やけに深く沈み込む座席に腰掛ける。古い電車はすこしかび臭い気がした。

 

鷹の台駅から武蔵美ってこんな遠いんだっけ。商店街を抜け、玉川上水の遊歩道を抜け、公園を抜けて15分くらいかかる。鷹の台駅で降りた人々がみな同じ道を進むので、ただただついていく。各々に着飾るご一行は、アリの隊列か、もしくはファッションショーか。

 

玉川上水の畔に生えるヨウシュヤマゴボウや、種類の分からない赤い実を愛でながら隊列を進むと、友人がちょうどすれ違った。自分でも思わぬ反射神経で力強く肩をたたいてしまい、かなり驚かせてしまった。ごめん。このあとバイトがあり早めに帰るのだという。「あとでお店行くかもー」と伝えてわたしは大学に、友人たちは駅に向かう。

 

芸祭は、たのしいはたのしいけれど、あんまり一人で行くものではなかったような気もした。学生、もしくはアーティストが作ったかわいらしいアクセサリーや雑貨がとても安価で売られていて、これが中野ロープウェイにあったら全然買っているんだけど、目の前の人が作ったと思うとなんだか才能の青田買いというか、青稲穂刈りというか、あるいはただ気恥ずかしいというか、そんな気がしてしまった。ついぞ財布を出すことはなかった。

私はいつまでも美大コンプレックスをやりつづけるのかなあ。美大に入りたいなんて高校生のころには一度すら思ったこともなかったのに、何かを夢見て、作りたいものを作って、泥だらけでキラキラな若人たちを見て少し切なくなってしまった。もちろん彼らにも紆余曲折臥薪嘗胆只管打坐あるのはわかるけれど、祭という環境はそうした薄黒いものを緞帳の裏に隠してしまう。シンプルに人が多くて疲れた。友人の妹さんもちらりと見かけただけであいさつはできなかった、不均衡を作ってしまって申し訳ない気分。建物はほんとうにかっこいい。

 

特段目的があったわけでもないのでなんとなく周っていると、数段下がったピロティで20人くらいの学生がリズムに合わせて踊っていた。踊る、というか、からだを動かす、というか、コンテンポラリーダンスというわけでもない、身体表現のパフォーマンス。からだを乗りこなすには鍛錬が必要なんだろうなあ。1時間弱、わりと長かったと思うけれど、どこか見入ってしまった。

展示も幾部屋か見たけれど、あんまり印象に残るものはなかった。大学美術館でやっていた西田俊英「不死鳥」展はなかなか良かった。思えば休職してからあんまり美術館にも足を運んでいないんだった。卒展にはまた来ようと思う。

 

鷹の台駅への民族大移動はやりたくなかったので、逆方向に歩いていく。小平はその名の通り平らな土地なので、風がよく通り、身体が冷える。季節外れの向日葵が一輪だけ咲いていた。

 

東には大きく黄色い満月が昇ってきていた。もう少し高く昇ったころ、すぐ右下に明るく光る星があるなと思ったけれど、どうやら木星だったらしい。

 

駅が近づく気配もなく、いかにも北多摩西部らしい平らで真っすぐで車の多い道を歩いていくと急に東大和市駅に着いた。

 

東大和市駅ぎりぎり小平市にあり、駅の北側からすぐ東大和市になる(後注:線路の南側に市境があり、ぎりぎり東大和市、南側がすぐ小平市)。モノレールの終点の上北台駅がある市でもあります。車を運転する人なら、芋窪とか奈良橋とか。立川の真北、といえば把握しやすいかなあ。あと多摩湖ダム湖)がある。私も正直あまり印象がない。駅の南側は特に何もなかったけれど、北側は東大和市の玄関口として大きなロータリーがある。

キャラクターは…舌を出し、いちごを身にまとった犬?「うまべぇ」というらしく、いちごではなくお椀だった。もともとは市内でやった食のイベント用のキャラクターだったのが市全体で使われるようになったようだ。せんとくんと同じパターン。あとちょっとさのまるに似てない?

 

駅前にあるのは…スケートセンターと、BIG BOX(ボウリング場とか。高田馬場にもあるよね。西武系。)。なんだこの微妙にレジャーな駅。駅前の商店はウェルパーク(ドラッグストア)くらいしかなくて驚いたが、少し離れたところに西友いなげやヤオコー、ヨーカドーなんかがあるらしい。車社会だね。アイスホッケーの棒(?)を持った子どもが通って、へえーと思った。

 

BIG BOXの1階は子ども用の大きな室内遊び場になっていた。子ども1500円くらいかかるらしい。

 

寒いし疲れたのでミスドでしばらく休んで読書。ミスドのカフェラテおかわり無料はどんなカタストロフがあっても続けてほしい。

ふだん全く乗ることのない西武拝島線、そしてそのまま直通して普段あまり乗ることのない西武新宿線に乗る。小平、花小金井、田無(あるいはより西に行って久米川、東村山、そしてもちろん所沢、新所沢)なんかはちゃんと西武の文化圏を感じるけど、武蔵関は吉祥寺だし、上石神井西荻窪だし、井荻は荻窪だし、鷺ノ宮は阿佐ヶ谷だし、野方は高円寺だし、沼袋・新井薬師前は中野だと思っている…のはどうでしょう。あんまり歩いたことがあるわけではない。随時異論を受け付けています。

 

野方に来た。練馬に住んでいたころに自転車で通りかかったことは何度かあるけど、目的地として来るのは多分2回目。商店街がかなりいい感じ。いろいろある。

 

駅から離れたところに短いアーケードとバスの転回場があったり、なんかふしぎな街だ。上の写真では奥に吉野家、手前に松屋が写っているが、奥の吉野家はテイクアウト・デリバリー専用だった。

 

行ってみたい古着屋があって来てみたはいいが、ちょっと好みとは合わなかった。近くの飲み屋ではおじさんたちが種無しがどうだの100Pがどうだの喋っていた。なんかでも野方は絶妙にしゃれた街だと思った。高円寺の要素に、落合や目白のハイソな住宅街をスパイスとして足した感じがする。スーパーも知らないスーパーが多く、輸入食材もけっこう置いているようだ。沼袋とか新井薬師前もそんな感じなのかもな。

 

さっき述べたように野方から高円寺は歩けるので、歩いていく。寒さは少し和らいだかも。まっすぐ歩いたら30分くらい。高円寺の商店街に入り、きれいな古本屋で本を2冊買った。

 

布施英利「体の中の美術館」、山口仲美編「擬音語・擬態語辞典」。古本屋なのにやけにきれいだった、ぜんぶが。店番の女性は常連であろう女性とずっとU-NEXTの話をしていた。

 

あたりを調べると近くにタタ shop / galleryがあることを知る。名前は知ってたけど行ったことないので行ってみよー。

かなり奥まった路地にある。しかもダムタイプの展示をしているらしい。店の中はかなり狭く、小さなカウンターを囲んでおじさん3人がお酒片手に談笑している。こんばんはー…。「あ、展示は2階です!はしごで昇ってもらって、荷物はそこらへん置いちゃって。急なので気をつけてくださいね、腰悪い人はちょっとあれだけど、若いから大丈夫かな」「ありがとうございます、あでもちょっと前にぎっくり腰やっちゃって…」「あらま、まあ落ちた人は今までいないらしいので、ごゆっくりー」。

 

ダムタイプの初期の資料展示が中心だった。詳しくはないのだけどかなり気になるというか、好きな人たちなので、もっと詳しくなりたいしいろいろ見てみたいな、という感想。アーティゾンでやった展示に行きそびれたことが惜しまれます。松濤美術館でやってた「装いの力ー異性装の日本史」展で「S/N」の映像を見入っていたことがある。そういえばさっき武蔵美で見た学生たちのパフォーマンスもダムタイプに近からず遠からずだったような。

 

下に降りて、軽く並んでる本を見る。マイケル・ホルト「芸術における数学」を購入。「500円ですー、実は俺たち店の人じゃないんだけどね(笑)、なんか今日店主は諸事情があるらしくて、1日だけ店開けといてくれって。」おもしろい空間だった。また行こっと。

 

さっき鷹の台で通りすがった友人が働いている居酒屋で夜ご飯。さっき買った本を読みながら、ひたすら飲み食いをする。けっこう繁盛店なので基本的には黙って読書。たまーに友人に話しかける(芸術における数学を読みながら「計算っていう言葉は石という意味のラテン語から来ているらしいよ」とか、擬音語擬態語辞典を読みながら「からすとほととぎすとうぐいすのすは全部同じらしいよ」とか)。"友人が働いている姿を見る"のが実はほぼ初めてだったような気がするけど、目の前でせわしく動く店員 / 友人を見るのはなかなか楽しかった。豆乳ハイの注文を忘れられたりもしたけど。

 

22時すぎくらいでお会計。一人飲み、あまりしないのだけど毎回思っているより高くつくので、やっぱり友人と飲みに来るほうが楽しいなあ。また中央線界隈にいる一日だった。渋谷の乗り換えがきついし、イヤホンの充電もなくなっていた。

 

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モニコのちすれ違いのちカウンター越しマルチチャネルにあいまみえたり

心身二元論を信じているわけではないけど身体はあまりにも他人の行儀

夢なんてもともと見てないはずなのに夏を嫌った向日葵一人

黄色い月から沈んだ太陽をめざしていた夢破れた都市計画道路

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日記のつもりだったのに結局散歩記っぽくなってしまった。頭がまだ悪いので、写真によって思い出すことのできる、時間軸に沿った思考しかできない。読んでくれた方はありがとうございました。それでは。