何かするのもつらいが、何もしないのもつらいので大回り乗車をすることにした。金も使う気が起きないし。けっこう鉄道オタクなのでよく似たような動画は流しているのだけど、自分がするのは初めて。
大回りなのでもちろん目的地はないけれど、有名な我孫子駅の唐揚げそばを当面の目的地とする。14時前に起きたので、15時からのスタートである。
渋谷駅まで出て、150円の切符を買う。人がとんでもなく多い。
山手線外回りに乗り込むと、座席が1つ空いていたので座る。山手線は1周だいたい60分というのは有名だと思うけれど、長いか短いかでいうと思っているより長い気がする。日暮里まで30分。新宿や池袋で乗客が大きく入れ替わるが、隣に座っている韓国人とは30分間一緒だった。京成線に乗り韓国へ帰るのだろう。
日暮里からは常磐線に乗る。我孫子までは30分で着くらしい。これは短い。成田行きの10両編成なこともあってか混雑していたので、北千住で地下に降り緩行線に乗り換えることにする。北千住は東京メトロ管理の駅なので、JRの大回り乗車で乗るには少し違和感があるね。
緩行線も思ったより混んでいる。亀有で座る。金町で東京都は果て、松戸から千葉県に入る。新松戸で大半の乗客が降りた。北小金、南柏、北柏など降りることのなかなかない駅が続く。床にペットボトルが転がっている。
我孫子着。唐揚げそばの弥生軒は何店舗もあるらしいが多分一つしか開いていなかった。混雑。食券。注文。着丼。冷やしがありがたい。
味は美味しいかというと普通だが、価格に対して食べ応えがあり名物になるのは頷けます。
我孫子からは成田線に乗り千葉へ周るか、引き続き常磐線を北上するかの分岐がある。常磐線に乗ることにする。
利根川を越え、茨城県へ。周囲は林や田んぼが増えてきた。これまでずーっとぼーっとしていたが、藤代駅だったかな、特急の通過待ちで初めて本を開いた。ひるがえれば、移動さえしていれば退屈しない精神状態であるということでもある。
ひたち野うしくって冷静にすごい名前だと思う。「みなみ野はちおうじ」とか「つくし野まちだ」みたいなことである(「常陸-の-牛久」という意味もあるのかもしれないけれど)。常磐線は駅間が長く、それだけでどことなく旅情を感じさせる。
友部駅に着いた。そろそろ日も落ちかけている。ここからは水戸線に乗り、小山へ向かう。水戸線は水戸に行かないことで有名であり(友部から直通する列車はある)、横浜線や奈良線の仲間である。駅の周り何もないな。
クロスシートがありがたい。基本的に乗客が少なく、車両に私しか乗っていないこともあった。空気輸送という言葉があるが、大回り乗車というイレギュラーな乗り方をしていることもあり、今私は限りなく空気に近い存在であると思った。
水戸線の駅は聞いたことのない駅が多かった。「稲田」「福原」「玉戸」など、どこにでもありそうで見たことのない駅名が続く。沿線に特段大きな町があるわけでもなく、有名な観光地があるわけでもない、そんな静かな路線。稲荷や焼物が有名な笠間、城下町結城、蔵造りの町の真壁(やや沿線からは外れているが)などはいずれ観光してみたい。
日が沈み、周囲が暗くなるまでの1時間を水戸線のクロスシートで過ごし、小山駅に着いた。もうここからは帰路と称しても問題はない。構内のNewDaysでとちおとめのお菓子を買う。
上野東京ライン平塚行き。北関東の地で平塚と言われても興が覚めますね。辺りも暗いので本を読んだりなにもしなかったりして過ごす。大宮に着く。大宮駅の駅ナカはいつ見ても充実している。利用したことはない。
最初は千葉方面に行く心づもりだったのでこのまま東京にまっすぐ帰ってしまうと大回り乗車のルートではなくなってしまう。ここからも大回りして帰らないといけない。
埼京線で武蔵浦和へ行き、武蔵野線に乗り換える。乗り換え通路は花火大会帰りらしき人が大挙していて、前を向けなくなる。今日初めてのイヤホンをする。
車内に乗り込むと浴衣姿の人はいなかったので安心した。武蔵野線は駅間が広いので速い。歌集を読み終える。府中本町着。同じアルバムをリピートする。
南武線は21時台になると14分に1本になるようだ。あまりに少ないと思うのですが。駅間が狭いので遅い。一時は通学にも使っていたが、なんだか久々に乗る気がする。網棚にスポーツ新聞が挟まっている。武蔵小杉着。同じアルバムをリピートする。
武蔵小杉の乗り換え通路は迂遠である。湘南新宿ラインに乗る。湘南新宿ラインは都心の割に本数が少なく、また間隔が不均等なのであまり好きではない。乗れば速いけど。恵比寿着。自動改札に弾かれたので有人改札で「すみません大回りで…」と言って出場する。おしまい。
約8時間、150円。無駄といえば無駄、贅沢といえば贅沢。移動だけをして、特に何もしない一日。家で何もしないよりは移動しながら何もしなかったほうがすこし何かをしたような気にさせられる。窓越しに移りゆく景色を見るのは面白いが、画面内の動画を見るのと同じように退屈でもある。幸せというわけでもなく、元気になれるわけでもないが、やや楽しい小旅行だった。